ミルトン・エリクソンは20世紀最高の天才的催眠療法家と言われています。また精神・心理療法に「物語」を使ったことで、知られています。また、アメリカ臨床催眠学会の創始者で初代会長。また、アメリカ精神医学会、アメリカ心理学会、アメリカ精神病理学会などのメンバーでもありました。
エリクソンの言葉に「治療に抵抗するクライアントなどいない。柔軟性にかけるセラピストがいるだけだ」というものがあります。クライアントに対する柔軟な態度は、私の印象では漫才師や落語家のような、芸能という属性が適切に応用されている感じです。
前述しましたが、エリクソンのセッションには「物語」がたくさんでてきます。
それは昔話だったり、流行りの歌だったり、エリクソン自身の経験談だったり、他のクライアントの事例だったり。
そして、その物語は、その時のクライアントに個別化されて最適化しながら話されていきます。
物語はまず聞いていて楽しいです。そして物語は命令するものではなく、自らが聞くうちに気づきを得る体裁をとります。
「~でなければならない」と強迫的なイメージが強い人に対して、「違うよ。~すべき」といっても、抵抗性が強くなってしまいます。
しかし、物語のような間接性を用いた誘導は、強迫性を伴う抵抗がある場合にも有効なのです。物語は、聞き手の名誉を傷つけたり、独立心を阻害することなく、自らの創造性を持って道を切り開くことができます。
聞き手は、物語から教訓を引っ張り出そうとするとき、抵抗的ではなくなっています。
それは人間の認知機能に関する部分が関わっていると思われます。
物語は感情と結びつきやすく、自ら気づきを得た時、良い感情と共にその物語は記憶されます。
抵抗から解き放たれた後は、素直な気持ちとなり、その後の行動の指針となるでしょう。
たとえば、世界的に有名な物語に「北風と太陽」という話があります。
あらすじはこうです。
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あるとき、北風と太陽が旅人のコートを脱す勝負をしました。
北風は強力な風で上着を吹き飛ばそうとしました。
でも、旅人はしっかりとコートを身体に押さえつけ、脱がすことはできませんでした。
こんどは、太陽がきて、気温を上昇させました。
そうすると、暑くてたまらず、旅人は自ら上着を脱ぎました。
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ここからも、その人のその時に合わせた教訓が導き出されていきます。
研究会では主に、
書籍「ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー」などの輪読。
エリクソンのセッションに対する読み取きとディスカッション。
セッションで使われていたテクニックや物語の置き換え(自分たちの身近なな物語に置き換えてみる)
などを中心に行っています。
書籍「ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー」の中には、様々なセッションの描写と、エリクソン自身の解説などがでてきます。中でも、当該図書の解説者である、ジェフリーゼイクは「水曜日の章」の中にでてくる「自殺しそうな看護師のベティに関する話」は芸術的だと絶賛しています。
ここには「死と再生という自然な循環の中に本人を自然に導く」という生き方そのものの示唆が現れていたりします。
月に1回~2回程度行っています。参加者の方はミルトン・エリクソン研究会(フェイスブックのクローズドのページ)に招待します。参加費は一回2000円です。ご興味あるからはメッセージください。